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日常生活の雑感を書き出しています。備忘録的役割。

【感想】『学び続ける力』

読了:池上彰『学び続ける力』講談社現代新書、2013年。

 数年前の本ですが、なんとなく池上彰氏の本が読んでみたくなって読みました。別に取り立てて池上氏を支持しているとかってわけではないんですけどね。でも、一時期、どこを見ても池上氏が出てるんじゃないか?ってくらいテレビに引っ張りだこだったような気がするんですが、なんかそういう印象もあって、どういうことを書かれるお方なのだろうかと。
 名前で検索して、電子書籍化されているものの中からタイトルで気になったのを選んだのがコレでした。

 「教養とは何だろう」ということを、大学生の頃からずっと考えてきました。なかなか答えが自分の中では出ないまま、たくさんの本を読んだり、テレビで解説をしたり、自分でも本を書いてきました。
 東京工業大学で毎週、理系の学部生に一般教養を教えることが決まったとき、講談社現代新書の堀沢加奈さんに「一般教養として現代社会について教えながら考えたことを、書いていただけませんか」という依頼を受けました。自分がずっと抱いてきた問いに向き合い、考えを整理する機会になるのではないか……。そんな思いから、本書を書き始めました。
(「おわりに」より引用)

 いきなり「おわりに」の部分からの引用なのですが、池上氏が本書を書かれた動機です。

 よく「あの人は「教養」がない」だとか「「教養」は大切だよ」だとか、何かに付けて「教養」って単語は聞くのですが、その意味を明確に説明できる人はなかなかいないのではないでしょうか。とりあえず「教養」って言っておけばそれっぽく聞こえる。そんな程度で使われているように思えます。


 本書が書かれた当時、池上氏は東工大学で授業を行っていたようで、どんな授業をしていたかということにも触れられています。字面だけを追うとなかなか面白そうだなーとは思うのですが、実際に当事者だったら「面倒な授業」と感じたかもしれません。2回のレポート提出に、試験はテーマに対する記述式、評価は厳しめ……だったそうです。
 テーマは現代日本や現代世界だったので、いずれにしても「歴史」を取り扱うということで心掛けていたことがあるそうです。

「過去にこんなことがありました」と事実を教えて終わるのではなく、時代の空気を少しでも伝えられれば、と思うのは、歴史を学ぶということは、追体験をどこまでできるかということだと思うからです。
 歴史を学ぶというのは、ものごとの因果関係をきちんと知ることです。それを知ることで、これからの時代についても、推測したり、自分なりの考えが持てるようになったりします。
 そのためにも、六〇年安保でも、六八年の反乱でも、当時こんなことがあったということを、彼らにその時代の学生になったつもりで追体験してもらってこそ、本当の意味で理解が深まると思うのです。
(「第2章 大学で教えることになった」より引用)

 この視点、歴史を学ぶ上では結構重要だと思うんですよね。歴史ってどうしても事実の羅列を暗記するっていう勉強方法になりがち(特に試験勉強)で、年号やら訳の分からない言葉や法律やらを覚えなくてはいけません。学生時代、私の周りでもよく「歴史はつまらない」って言葉があがっていました。
 タイムスリップはできないので、いかにその時代背景も一緒に伝えられるかってことは社会を教える先生にとっては永遠のテーマかもしれませんね。そういう意味では歴史小説なんかは非常に良い教材なんだろうけど、学校ではさすがにそれを教科書として使うことはできないし。

「はじめに」にも書きましたが、「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」ことが多いのです。すぐには役に立たないけれども、あるいは、一見役に立ちそうにないけれども、長い目で見ると、心の栄養になったり、自分を高めたり、自分の世界を広げてくれる本もあります。
 そういう本が、教養にとっては大事であり、生きていく上でも大事なのではないかと私は思うのです。
 すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる。
 後からジワジワ役に立つものもある。
 本を読むときには、そういう考え方も、また必要ではないかなと思います。
(「第4章 読書の楽しさ」より引用)

 今あるビジネス本とか自己啓発系の本って、全てがそうではないと思うけど、結局それら「古典」と言われている理論を現代風にアレンジしたようなものであったり、分かりやすく言ってるだけであったりするものが多いから、やっぱりその根本にある「古典」を知っておくことは大切なんだろうなぁ。まぁ、だからこそ今でも読まれ続けているのだろうけど、いざ読み始めるとなかなか……ね。


 話し口調で書かれていたこともあり非常に読みやすかったですし、池上氏がどのようなことを考えられているのかが分かりやすく書かれていました。ただ、まぁ、なんだかんだ言っても「差し障りない」ことしか書かれてなかったので、「ふーん」で終わってしまう可能性のある本だと思います。


今回はこんな感じです。