kmpen148のいろいろ

日常生活の雑感を書き出しています。備忘録的役割。

【感想】『図書館の神様』

読了:瀬尾まいこ『図書館の神様』ちくま文庫、2009年。
www.chikumashobo.co.jp


 まだまだ私の中で瀬尾まいこ作品再読キャンペーン実施中です。本作も一度読んだことがあり、本棚には並べられてあったのですが、正直いつ読んだのか、そして内容も全くと言っていいほど覚えていませんでした。


 主人公・早川清(以下、清)が赴任した高校で文芸部の顧問になり、たった1人しかいない部員・垣内君とのやりとりを通して色々と前向きになっていくという内容です。まぁ、展開的にはベタというか王道という感じで、特にこれといったひねりはないんですよね。別に大きな事件があるわけでもないし、あっと驚く結末が待っているわけでもありません。

 印象的だった場面を取り上げてみます。

 雑草は、強いと言いますが、どうしてでしょう。
 彼らだって弱い部分があるはずです。
 「踏んでもすぐ立ち直る」
 「愛情をかけなくても強く生き抜く」
 かわいそうです。
 見ていられません。
 聞いていられません。
 僕は彼らの弱い心を見つけられるそんな大人になりたいです。


 道ばたではさっぱり売れそうにはなかったけど、面白かった。垣内君を作っているどの部分がこんな言葉を生み出させるのだろうか。垣内君のどういう経験がこの言葉と結びつくのだろうか。そう考えると、興味深く、何回も読み返した。知っている人の紡ぐ言葉は、こんなにも心を打つのかと驚いた。


 文芸部の部室である図書室にはクーラーがないので、その費用を稼ぐために清が垣内君に詩を書いて道ばたで売ろうと提案したときのやり取りです。このことを面白く感じた清は授業でも生徒に書かせることにしました。

 初めはぶつくさ言っていたが、何行か書き出すと、生徒達はみんな無言で作業にのめり込み始めた。次第に教室は文字を刻む音だけが響いた。人は実はいつも語りたがっている。自分の中のものを表に出す作業はきっと気持ちがいいのだ。
 生徒の書いたものは単純に面白かった。もちろん、「こんなことをさせられてとても嫌だ」という不満めいたものもあったし、どこかで聞いたようなありきたりの使い古された言葉が並べてあるものもあった。だけど、きっとどれも十代のこの瞬間にしか書けないものなんだと思うと、とても貴重に思えた。


 「人は実はいつも語りたがっている。」まさに、だからこそSNSなんかが爆発的に流行っているんだと思います。まぁでも、ブログだって商業的なものを除けば結局のところ自分語りのようなものですしね。
 もともとはテレビのインタビューとか自伝とかで限られた人(芸能人など)しかできなかった自分語りが、インターネットによってハードルが一気に下がり一般人でもできるようになりました。この辺は周知の事実でしょう。ただ、インターネット、とりわけSNSがここまで流行りまくっているのはやっぱり多くの人が「自分語り」をしたい欲があるからこそなんだと思います。



 さて、場面は変わり、職員会議での様子です。

 「来年度は生徒数も減るから、部活の数も精選しないとな」
 「どうせ文芸部に部員が入ったとしても、新入生が何人か入るぐらいだろうしね。切っちゃってもいいんじゃないか」
 「それに、文芸部を置いておく利点もないですしね。垣内みたいな生徒がくすぶってしまうのももったいないですからね」
 くすぶってる?
 「垣内だって、体育会系のクラブにいたら、ある程度成績を残していただろうし、もっと活躍できただろうにな」
 「まあでも、他のクラブでドロップアウトする生徒のために、ああいうクラブも必要でしょう」
 「だったらパソコン部や美術部で間に合うんじゃない」
 ドロップアウト、間に合わせ、暇つぶし……。不愉快な単語が次々と飛び交う。垣内君の文芸部での活躍を彼らは知らないのだろうか。


(中略)


 「あの、みなさんのおっしゃってることがまったく理解できないんですけど。文芸部は暇つぶしでもないし、垣内君はくすぶってもいません。文芸部は毎日とても活発な活動をしています。一日だって同じことをしている日はありません。毎日毎日新鮮な真新しいものを生み出しています。ただ単に勝つことだけを目標に、毎日同じような練習を繰り返しているような体育会系のクラブこそ、存続を考えたらいかがでしょう」
 私の発言に、松井は笑ったが、他の全ての教師が不愉快そうな顔をした。
 「朝練に土日の練習に。こっちは休みなしで働いている。活動時間からしてまったく違うんだよね、文芸部とは」
 野球部の青木が言った。


 なんというか、全部が全部こうじゃないと思うんですけど、職員会議ってこんな感じなんですかね。作者の瀬尾氏自身が教師だったこともあるので、こういう学校内の出来事って少なからず反映されているのかなーとは思っています。
 運動系部活ってどうも文化系部活よりも上に見られている節があると思うんですけど、一瞬しか登場場面がなかったこの青木っつーのには腹が立ちましたね。ちなみに私は高校時代は野球部でしたが、もし当時の顧問がこのような考えを持っていたとしたら失望していましたね、今となっては知りませんが。

 まぁ、部活はあくまで生徒の心身の成長を促すための活動であると思うから、活動方針に則って問題なく健全に活動できていればそれで良いんだと思います。


 今回はこんな感じです。
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