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【感想】『悪いものが、来ませんように』

読了:芦沢央『悪いものが、来ませんように』角川文庫、2016年。

悪いものが、来ませんように (角川文庫)

悪いものが、来ませんように (角川文庫)


ジャンルはミステリーなのでネタバレは極力少なめにして書いたつもりです。


さて、読み終わってまず感じたのは、「交わらなかったそれぞれの思い」でした。


物語は柏木奈津子、庵原紗英の2人をメインとして、合間合間にその2人と関係のあった人物のインタビューみたいなものが入るという形式で進んでいきます。
こういう形式は初めて読んだかもしれません。

なぜインタビューが入るかというと、ある事件の犯人に対しての証言という意味合いなのですが、こう書いてしまうとその事件の犯人はその2人のどちらかってことが分かってしまいますね。
いや、被害者側かもしれませんよ?


それはさておき、物語当初から人物の関係性に違和感を覚えていたのですが、それが徐々に明らかになっていくと、「あぁ、それぞれの思いが交わらなかったんだなぁ……」と。

以前の記事でも取り上げた、「教育虐待」に近くて、奈津子と奈津子の母親の関係なんてのはまさにそれなんじゃないのかな。


奈津子の母親は奈津子に対して、しっかり躾をしてきた、可愛いからこそ自分の人生を犠牲にしてきた、いい関係だったと語る場面があるのですが、一方で奈津子は、

私はずっと、母みたいにだけはならないって決めていたんですから。

 母はいつも突然怒り出すので、何が引き金になってしまうのかわかりませんでした。だからいつも、母の顔色をうかがって、お母ちゃんに嫌われないようにって、結局のところそればかり考えて生きてきたんです。

と、結局のところ母親を反面教師として生きてきたようで、こういうすれ違いって現実世界でも往々にしてあるのかなぁ……と思ってしまいました。


なんかちょっと物語の本筋とは逸れた部分が気になってしまったのですが、これ以外にも登場人物それぞれに「思い」があって、一見通じているかのように見えて、実は微妙にズレていた……なんて部分があります。

私としてはそこが一番印象に残ったので、冒頭にも示した通り、「交わらなかったそれぞれの思い」と表現しました。


正直、晴れやかな気持ちで終わらない物語でしたが、展開等含めて非常に作り込まれた作品だったと思います。


今回、作者の芦沢央氏の作品はこれが初めてだったのですが、早速別の作品を購入しました。楽しみです。


今回はこんな感じです。